野口悠紀雄氏は、ChatGPTを活用することで迅速に情報を得られると主張し、特に「適切な問いを立てること」が重要だと強調しています[1]。確かに、ChatGPTは質問に即座に回答し、誤りを指摘したり、情報を提供する強力なツールです。しかし、この見方には一つの危険性があります。
ChatGPTは、あたかも和太鼓のような存在です。和太鼓は、叩き手によってその響きが大きく異なる楽器です。同じ太鼓であっても、熟練した叩き手は繊細なリズムや力強い音を自在に操り、聴き手を魅了します。しかし、初心者が叩くと、音は平坦で無個性なものになりがちです。ChatGPTも同様で、問いをどう立てるか、どのように深めるかによって、その回答は大きく変わります。
野口氏は「適切な問いを立てること」を重視していますが、その難しさは十分に強調されていません。問いを深めることは、まさに和太鼓を繰り返し叩き、その響きを感じながら修正していく過程です。博士課程で訓練を受けた者は、問いを立て、検証し、修正するというプロセスを繰り返す中で、このスキルを身につけています。対して、一般の読者はこの経験を欠いているため、「適切な問いを立てる」という野口氏のアドバイスは、単なる理想論に終わる可能性があります。
さらに、ChatGPTは常に正しいわけではありません。その回答は過去に学習したデータに基づくものであり、事実を保証するものではないのです。ChatGPTの回答を受け取った際、叩いた太鼓の音が正確かどうかを聞き分ける「耳」を持つことが求められます。これは批判的思考と呼ばれるスキルであり、問いを深める力とも繋がります。
CoMIRAIスフィアでの場では、この「和太鼓としてのLLM」を使いこなす最適な場です。メンバー同士で、LLMを通じて互いに問いを立て、修正し、深めることで、単なる情報収集を超えた「知の共鳴」が生まれます。これは、LLMを「叩くだけ」の使い方ではなく、「響かせる」使い方なのです。
このエッセイを通じて、ChatGPTを含むLLMはただのツールではなく、知を共鳴させる和太鼓であることを理解してもらいたい。その響きは、叩き手次第で無限の可能性を秘めています。
参考文献:[1] FinTech Journal 連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
追伸;このエッセイはChatGPTとの対話から生まれてきたものです