技術の向こうに構造を視る──Googleから始まる問いの旅

2025年春、Googleは「AI検索の全面展開」という大胆な一手を打った。
検索結果をAIが生成し、回答と出典を左右に分けて表示する新インターフェース。従来の「検索してクリックする」という行為を再定義するものであり、まさに“検索の再構築”を宣言するものだった。

だがこの変革は、Googleにとって自らの収益構造を切り崩すものでもある。
検索連動広告という巨大なエンジンは、ユーザーが「個別サイトへ訪問し、広告に触れる」ことで初めて回り出す。AIが情報を直接提供し、ユーザーが外部サイトに行かなくなるなら、その前提自体が揺らぐ。
それでもGoogleは進む。「AIによってクエリ数が増えた」と言いながら、心の底では新しい収益構造の模索に追われている。

このニュースを起点にした私たちの対話は、やがて視野を日本のスタートアップ、そして教育の現場にまで広げていった。


技術は進化する。だが、人と組織はどうか?

プリファードネットワークスをはじめとする日本のAIスタートアップは、世界水準の技術を有している。しかし、巨額の資金を調達しながら、現場への実装と収益化の「出口」を見出すことができずにいる。
その原因は明白だ。**「技術はあるが、構造がない」**のである。

大学もまた同様だ。AI人材育成を掲げて次々と講座やプログラムが生まれているが、それらの多くは時代の要請に追いついていない。Pythonを教え、モデルを学ばせる。だが、どこで、誰に、どのような文脈で使われるべきかという構造的理解が欠けている。


今、本当に必要なのは「構造を変える力」だ

Codexに代表されるAIツールの進化は、単に「人間の代替」ではない。
工程を短縮し、分業を解体し、仕事の構造そのものを変えてしまう力を持っている。
人間が学ぶべきことは、もはやスキルではなく、「どこに、どんな構造をつくるか」という編集力なのだ。

そして、日本にはそれを実装するに足る現場がある。
未構造なデータ、言語化されていない知、形式知に収まりきらない暗黙のルール。
価値は、中央にはない。現場にある。


私たちに問われているのは、「見える技術」ではなく、「見えない構造」だ。

Googleの動きは、世界に対して問いかけている。
──技術の進化が止まらない時代に、
 あなたの組織は、構造を変えられるか?
 あなた自身は、変化を意味づけられるか?

日本の大学、スタートアップ、そして産業の現場に必要なのは、答えではない。
その問いを、自らの立ち位置で引き受ける覚悟と構想力なのだ。

技術の向こうに、構造を視る。
それは、AI時代における本当のリテラシーかもしれない。

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