資本主義の次を生きる構え──グローバルと響きあう“問い直し”としての起業

かつて「起業」とは、富の象徴だった。
だが今、それは新たな意味を帯びはじめている。

すでに豊かさを経験した社会に育った若者たちは、次の問いを抱えている。
何のために働くのか。何を残すのか。どのように共に生きるのか。
そしてその問いは、静かに、しかし確実に資本主義という枠組みの内側を問い直しはじめている。

起業とは「解」ではなく、「問いのかたち」

スタートアップが生まれているのは、単なる経済的合理性の土壌ではない。
むしろ、社会課題に対する痛みと共感が起点となり、技術や経済はその媒介として用いられる。

再生可能エネルギー、循環型経済、AIによる資源最適化。
それらは一見テクノロジー主導に見えるが、その背後には一つの共通した構えがある。

「利便性よりも意味を、成長よりも関係性を」

そう考える若者たちが、北欧、オランダ、カリフォルニア、そしてこの日本からも、静かに動き出している。

事例としての「北欧」「カリフォルニア」「オランダ」

  • 北欧(スウェーデン/フィンランド)
     寒冷で厳しい自然の中で築かれた協働と共生の文化が、「循環型経済」や「社会的起業」の温床となっている。
     例:スウェーデンのNorthvoltは、サステナブルなバッテリー生産を通じて欧州の脱炭素社会を牽引している。
  • カリフォルニア(ベイエリア)
     テクノロジーと社会課題を結びつける起業家が集い、気候テック×VCという新たな潮流を生み出している。
     例:Charm IndustrialはバイオマスからCO₂を地中に封じ込めるカーボンリムーバル技術で注目されている。
  • オランダ(アムステルダム)
     都市が“沈む”リスクを抱える国土事情から、環境対策が国家戦略に組み込まれてきた。
     例:The Waste Transformersは、都市の生ゴミをその場でエネルギーに変える小型処理施設を展開。
     市民主体の起業文化と自治体との連携が密接で、官民協働のグリーンスタートアップが多数育っている。

日本の若者たちにとっての「次なる必然」

今、日本に生きる若者たちもまた、同じ問いを抱き始めている。
だが、この国の社会構造や教育制度は、いまだ過去の「成功モデル」の残像を引きずっている。
だからこそ、彼らが自らの問いを深め、かたちにするためには、“外の風”とつながる必要がある。

それは単に“海外に行け”という話ではない。
共鳴できる地域や価値観と、グローバルに接続すること
「誰とつながるか」によって、自分の問いが試され、磨かれていく。


Mt.Fujiイノベーションサロン──問いを深めるための連続的な場

こうした思索と実践の間をつなぐ場として、Mt.Fujiイノベーションサロンは今年度も始動した。
このサロンは、山梨県立大学との連携のもと、起業・創業にまつわる多様な問いを扱う連続プログラムとして企画されている。

その第1回となる6月19日のテーマは、「グローバル人材に必要なスキル」。
海外での経験や起業の現場から得られた視点を通じて、世界とつながるための力とは何かを参加者とともに問い直す機会となる。

「グローバルで働くとは、語学のことではない。
世界と響きあう問いを持ち、自分のまなざしを更新できる力のことだ。」

このような構えを持つ若者にとって、起業とはゴールではなくプロセスであり、自らを鍛え、世界と響き合う手段なのだ。

なお、この「グローバル人材」というテーマは今回限りの焦点であり、今後のMt.Fujiイノベーションサロンでは、地方と都市の関係、創業支援とコミュニティ、循環型経済など、多様な主題へと展開していく予定である。


むすびに──“次の豊かさ”は、共鳴から始まる

「資本主義の次」は、制度として来るのではない。
それは一人ひとりの中で始まる、問い直しの構えである。

そしてその構えは、共鳴する他者との出会いによって、初めて深まる。
だからこそ、我々は“共感できる世界”とつながらなければならない。
北欧と、日本。オランダと、山梨。カリフォルニアと、大学の教室。

世界と響き合う、その小さな接点から、次の豊かさは芽吹いていくのだ。

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