旅のかたちを継ぐ──ハーフタイムに浮かぶ人生の交差点

「今決めて母を旅行に連れ出さないと、きっと後悔すると思った」

ある女性の投稿に、心が静かに揺れた。
内容は、一台の車を選び、内装を整え、母と旅に出ようというもの。
大きすぎず、小さすぎず、ほどよい距離感と機動性。
迷っていたけれど、実車を前にして「これなら」とふたりで即決したという。

その決断には、**時間を取り戻そうとする“やわらかな覚悟”**がにじんでいた。
人生の後半──まだ完全に始まったわけではないけれど、
その扉を開ける鍵を、自ら選び取るような構えだった。


一方、その製品を生み出した側にもまた、
人生を折り返す人の姿があった。

家業を継いだものの、道は決して平坦ではなく、
倒産という途切れを経て、再び立ち上がり、再編集した。

単に会社を立て直すのではない。
「この仕事を、もう一度人の暮らしのなかに根づかせるにはどうすればいいか」
という問いを抱えながら、形を変え、語り直し、商品として届けた。

それは、まさにハーフタイムを“次の章のための再設計の季節”として過ごした人の選択だった。


このふたりが出会ったのは、ある車の内装キットという、
小さなプロダクトを通してだった。

だが、それは単なる買い手と作り手の関係ではない。
それぞれの人生のハーフタイムが、“旅”という言葉で交差した瞬間だった。


ハーフタイムとは、
振り返る時間ではなく、これからの時間をどう意味づけるかを選ぶ時間

母と過ごす、かけがえのない旅のために。
誰かの暮らしを豊かにするために、自分の仕事を再び信じ直すために。

どちらも、いまその静かな時間の中にいる。
セカンドカーブの“直前”、それでもう後戻りできないところまで来ている。


人生に必要なのは、完成された地図ではなく、
「これから旅を続ける理由」かもしれない。

その理由が、誰かの装置づくりによって手渡され、
また別の誰かの選択として生まれ直す──

そんな静かな循環のなかに、私たちは今、生きているのかもしれない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です