挑戦の気配に包まれて──FM FUJI本社ビルで感じたこと

FM FUJIの本社ビルを訪れたのは、今回がはじめてだった。

エントランスをくぐった瞬間、ふと足が止まった。ここが、日々の放送が生まれる場所──そう思うだけで、不思議な熱を感じた。放送という行為が持つ“現場”のリアリティ。その空気感が、肌にじんわりと伝わってきた。

FM FUJIは、いわゆる独立系のFM局である。巨大資本や中央のネットワークから距離をとりながら、地域に根ざした放送を続けている。そんな場所で、スタートアップをテーマとした30分番組「Startup YAMANASHI」が放送されているという事実。それ自体に、ひとつの強い挑戦の姿を見た。

そしてその番組を担っているのが、Mt.Fujiイノベーションエンジンの戸田さん、そしてFM FUJIの制作チームの皆さんだ。彼らの情熱が、収録の現場に自然な熱を生んでいた。その空気に触れながら、私は自らの言葉を投げかけることができた。

この体験を通じて、ある人のことを思い出していた。サンフランシスコで出会った、年長のメンター。私がいまから25年前に起業したときから、ずっと指導をしてくれている恩人だ。単なる助言者ではない。人生の節目ごとに寄り添い、時に導き、時に問いを投げかけてくれる存在である。

そんな彼が、8年ほど前にこんな言葉をくれた。

「加藤さん、何歳になっても挑戦することは良いことなんだ。私は今も、いろんなことに挑戦しているんだよ。」

当時すでに65歳を超えていた彼の姿に、私は言葉以上の説得力を見た。挑戦とは、若さの特権ではない。それは生きる姿勢であり、構えのようなものなのだ。

昨日のFM FUJIでの収録は、まさにその「挑戦の構え」を目の当たりにする時間だった。年齢や立場にかかわらず、自らの手で場をつくり、声を発し、未来を育てようとする人々の姿勢。その一つひとつに、私もまた呼応するように言葉を重ねた。

挑戦とは、結果ではなく、関わり方である。そしてそれは、どこかで必ず誰かに響く。FM FUJIのスタジオから発信される声が、誰かの未来に火を灯すことを願いながら、私はその場を後にした。

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