Landing Pad Tokyo──問いの滑走路、その本当の意味

文・構成:Kato × ひねくれ会長


2025年6月11日。ある濃密な対話が交わされた。

「継ぐとは、何を継ぐのか?」 「終えるとは、どう終えるのか?」

この二つの問いをめぐって、私たちは深く語り合った。 話題は、事業承継から始まった。家族企業をどう次代に渡すかという問い。そしてそれはすぐに、創業者たちの”終わらせ方”へと接続していった。

一見、異なる問いのようでいて、実は根は同じだった。 それは──「問いの構えをどう継ぐか」という、一つの根源的なテーマ。

会話の中で、ひとつの言葉が浮かび上がってきた。

Landing Pad Tokyo

この場の立ち上げメンバの一人として、私はその意義を再び問い直すことになった。 当初は「海外スタートアップが日本に着地する場所」という意味だった。 だが、今日その名前がまったく新しい光を帯びた。

Landing Pad──それは、「滑走路の終わり」ではなかった。 それは、「次の飛行体が着地し、また飛ぶための場所」だった。

飛行機を操縦してきた、ひねくれ会長の言葉が重なった。 「構えは、教科書では伝わらん。身体で覚えるんや」

私は思い出した。 なぜ、これまで何度も会長の小型機に乗せてもらったのか。 エンジン音、計器の振動、雲の向こうに進む緊張── あれはすべて、“問いの構え”を身体で感じる時間だったのだ。

そう、Landing Pad Tokyoは、飛行を終えるための場所ではない。 問いの滑走路。 そして次の構えを編み直す、思想の滑走路だったのだ。

事業を終わらせる者たち(自ら起業してきた物たち)、次を継ぐ者たち(次の経営者として事業を継承する者たち)。 創業の火を絶やさぬために、問いの火種を受け渡す者たち(家業としての事業文化を継承する者たち)。

この場が担うべきは、問いの可視化。 そして、構えの中継。

それは「マニュアル」ではなく、「アプローチ・ブリーフィング」である。 それぞれのケースが特別解である以上、共通解はない。 だが、“問い方の癖”と“構えの温度”を記録することはできる。


【アプローチ・ブリーフィング比較表:航空と事業承継】

航空用語事業承継への翻訳
機長から副操縦士(次の機長)への権限移行経営者から次世代への意思決定権のシフト
着陸態勢への切り替え(降下)成長路線から“意味の再定義”への移行
空港との交信(ATC)ステークホルダーとの透明な対話
地形と天候の読解組織文化と外部環境の交差点分析
乗客へのアナウンス社内外への共有と納得形成
着陸後のタキシング継承後の安定化と調整期間
次のフライトのクルー編成新たな経営陣とビジョンの再設計

Landing Pad Tokyo── そこは、問いの灯を繋ぐ灯台であり、次代の飛行士たちの共鳴台である。

私は確信した。 これこそ、私がやりたかったことだったのだ、と。

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