文・構成:Kato × ChatGPT(ひねくれ会長の記憶とともに)
ある日、ひねくれ会長の操縦する小型機に、私は同乗していた。
空の上では、なぜか思考が冴える。視界が開け、地上で言葉にならなかった感覚が、ふと形を持つ。
そして、その日もまた、忘れられない会話があった。
「会長、飛行機って……落ちるんですか?」
操縦席の横で、不意に尋ねた私に、会長は間髪入れずに返した。
「加藤さん、飛行機はな、落ちへんで。ぶつかるんや。」
「ぶつかる……? 何にですか?」
「山や。せやからな、今のフライトレベルと、下の地形をちゃんと頭に入れとけば、あとどれだけ余裕あるかがわかる。それさえ分かってたら、飛行は続けられる。」
この短いやりとりが、私の中でずっと反芻されている。
それは単なる飛行の話ではなかった。
それは、まさに経営という飛行の本質だったのだ。
経営もまた、落ちない。ただ、ぶつかる
企業は突然「落ちる」わけではない。
キャッシュがゼロになる瞬間も、信頼が一気に失われる瞬間も、外から見れば唐突に見える。だが、実際には**「どこかに存在していた山」に、気づかぬうちに高度を合わせてしまった結果**なのだ。
経営者は毎日、見えない空を飛んでいる。
だが、その下には地形がある。山があり、谷がある。人間関係という尾根、契約という断崖、売掛金の回収遅延という霧。
それらを“見ていない”だけで、“存在しない”わけではない。
フライトレベルとは、構えの余白
会長の言葉がもう一つ思い出される。
「高度がちゃんとあればな、何が起きてもまだ滑空できる。でも地面から50メートルしかなかったら、もう打つ手はないんや。」
経営でいう“高度”とは何か。
それはキャッシュフローであり、判断の余白であり、対話のネットワークである。
問題が起きること自体は致命的ではない。
問題が起きたときに“滑空できるだけのフライトレベル”がないことが致命的なのだ。
地形と天候──見えないものへの構え
そして、もう一つ。
経営において、危険なのは地形だけではない。
会長の言葉を借りれば──
「下だけ見てたらあかん。横風もあるし、上から雲が降りてくることもある。」
地形(固定費・契約・組織構造)に加えて、
天候(市場の変化、為替、法規制、感情、突発事象)がある。
どちらも“コントロールはできない”が、“備えることはできる”。
だからこそ経営者は、ILS(計器着陸装置)のように、システマチックな飛行計画を用意しながらも、最後は**“構えの眼”で地形と天候を読む訓練を受け続ける必要がある**。
承継とは、フライトレベルと地形の地図を渡すこと
事業承継とは、単なる“操縦席の交代”ではない。
それは、現在の高度を伝えることであり、下に広がる地形図を共有することであり、そして変わりゆく天候の中でどう飛び続けてきたかを語ることなのだ。
経営とは、日々の高度と地形の対話である。
そしてLanding Pad Tokyoとは、まさに**フライトレベルを確認し合い、地形の記憶を共有し、次の操縦者がぶつからないための「構えの滑走路」**なのではないか。
最後に、ひねくれ会長の言葉をもう一度
「加藤さん、落ちへんで。ぶつかるんや。
でもな──ちゃんと地図を見て、高度を測っときゃ、空は続いてる。」