文・構成:加藤聖隆 × ChatGPT
2025年6月19日、夕暮れの甲府。
山梨県立大学 飯田キャンパスのB館207教室にて、今年度第1回となるMt.Fujiイノベーションサロンが開催された。
サロンの表テーマは「共鳴」。問いを交わし、構えを揺さぶることで立ち上がる知の響き合い。だが、その裏には、もうひとつの火がひそんでいる。
それが「狂気」──制度の外縁から、時に逸脱するかたちで社会を変えようとする静かな力だ。
この夜、まさにその両方が、生きたかたちで姿を現した。
川越一磨──行動の中に宿る問いの火種
登壇したのは、株式会社コークッキング代表・川越一磨氏。
食品ロス削減アプリ「TABETE」の開発者であり、東京を拠点に社会課題と真正面から向き合う起業家だ。
だがこの夜、彼が示したのは、取り組みの成果ではなく、「いかに問いとともに動き続けるか」という構えだった。
加藤の無茶振りにも柔らかく応じ、その場で言葉を選び、発想を転じる。即興性と深度、そしてユーモア。
まるでジャズのような応答が、教室全体に“共鳴の余白”を広げていった。
その言葉は、学生にも社会人にも等しく届いていた。
──「語る人が生きている」
その実感が、場の空気をじわじわと変えていくのが感じられた。
佐藤孝太──未来からの逆流
もう一人の登壇者は、山梨県立大学 国際政策学部4年・佐藤孝太氏。
彼はすでに個人事業主として開業し、大学に籍を置きながら、自らの問いを社会にぶつけている。
大学生という枠を軽やかに超えたその姿は、場にとって一種の“静かな衝撃”だった。
発想力、行動力、そして制度に頼らずに動き出す胆力。
その全てが、まだ名前のついていない「新しい起業家像」を体現していた。
彼の語りには、躊躇がなかった。迷いながらも動き続けるという、その「狂気」が、参加者たちの中に問いを立ち上げていった。
Napoli──知の発酵装置
午後8時をまわり、場所は甲府駅近くのイタリアン「PIZZA BAR NAPOLI」へと移る。
ここは、サロンの裏舞台であり、問いが熱へと変わる発酵の場である。
肩書は外れ、席の配置もバラバラ。
ピザの香ばしさとワインの柔らかさの中で、語られる言葉が少しずつ形を変えていく。
Mt.Fujiイノベーションエンジンの代表理事である戸田さんが言った。
「Napoliを起業家たちの“聖地”にしよう」
冗談のようなその一言には、ある種の本気が宿っていた。
ここはただの飲食店ではない。
構えを外し、未来を語るための、非公式な知のキャンパス。
エンジンとは、こうした“余白の場”を大切にする運動体でもあるのだ。
共鳴と狂気の、その先へ
この日のMt.Fujiサロンは、ただの講演会ではなかった。
登壇者の語りをきっかけに、会場のあちこちで、構えの交換が静かに進行していた。
川越氏と佐藤氏。
異なる世代、異なる立場。
しかし共に、行動と問いを行き来する存在。
彼らの姿は、「共鳴のなかに狂気を孕む」ことの意味を、私たちに思い出させてくれた。
そしてその熱は、Napoliという場でさらに熟成し、やがて次の挑戦へとつながっていく。
Mt.Fujiイノベーションエンジンの名の通り、この場そのものが、静かに、確実に、何かを動かしているのだ。