生成AIが人間の創造性と結びつく時代において、製造現場の風景は静かに、しかし確実に変わりつつある。
この変化は単なる自動化の進展ではない。むしろ、「誰が設計するのか」「構造とは何か」という問いの再構築である。
私たちはこれまで、構造を設計し、UX(ユーザー体験)はその結果として生まれるものだと捉えてきた。だが、現場に立ち、生成AIと共に問いを掘り下げていくと、その順序が反転していくことに気づく。
マイクロUXの発酵と構造の浮上
現場における「ちょっとした工夫」「作業者の感覚的調整」「段取り替えの知恵」──それらはしばしば記録もされず、属人的なノウハウとして消えていく。しかし今、それら**“構え”に基づいたマイクロなUX**を、ログとして集積することができる時代になった。
そして、その発酵した知を評価関数という灯台で照らせば、生成AIは全体構造を浮かび上がらせる編集者として機能する。
- 設計を与えるのではなく、問いを投げる
- マニュアルではなく、構えをログとして蓄積する
- 最適化するのは工程ではなく、人の判断と振る舞い=構え
このような発想は、E2E(End-to-End)の自律的実装と、EBC(Evidence-Based Co-creation)による共創の融合として立ち上がる。
SIerが不要になるのではなく、場が編集者になる
これまでのロボットSIerは、部分最適な受託開発を繰り返し、持続的なビジネスモデルに至ることが難しかった。だが、この新しい構造のもとでは、「誰かが設計して与える」必要はない。
現場がロボットと共に、構えを表現しながら自己記述し、構造を育てていく。
その場には、評価関数だけが与えられていればよく、最適化されるのは現場ごとのUXに基づくマイクロ構造だけ。全体の制御や設計は、生成AIが“後から”編集してくれる。
それはまるで、群知的UXの発酵場から、自然に次の構造が醸成されるようなプロセスである。
構えをOSとする時代へ
このプロセスは、ロボットOSでも工場OSでもなく、**「構えのOS」**として機能する。
- 現場での構えがログとして蓄積される
- 良好な結果だけが評価され、構えが進化する
- 生成AIがそれを記述し、問いとして再編集し、次の構造を生成する
もはや「全体を設計する人」はいない。いるのは、問いを持ち、構えを発酵させる場だけだ。
設計とは、構えの発酵を許す条件設定である
問いを明確にすること。評価関数を設計すること。それだけで、構えが生まれ、AIが構造をつくる。
**「構え × 評価関数 = 構造」**という、逆転した設計論がここにある。
Make senseから、Make systemへ。そしてMake futureへ。
この対話のなかで私たちは、Make sense(納得)を超えて、Make system(構造の生成)へと至った。
そして、それは最終的に、Make future──構えが未来をつくるという地点にたどり着く。
技術はすでにある。あとは、どのような問いと構えで向き合うかだけだ。