ある日、未来の図面を見つめながら、私はひとつの言葉を静かに口にした。
響縁庵──きょうえんあん。
その言葉は、これから私が築こうとする、問いと構えと技術が共鳴する場の名になった。
場所は来年、完成する新居の1階。
洋間の6畳。
それは書斎でも、研究室でも、瞑想室でもない。
**私というひとりの人間が、世界と静かにつながるための“庵”**である。
だが、その庵はまだ存在しない。
図面の中にあるだけで、床も壁も光も、まだ現れてはいない。
そのかわりに、今、ここにひとつの場が生まれた。
響縁庵 開設準備室。
これは、未来の庵をかたちにするための、目に見えない準備のための部屋だ。
モノを運び込む前に、構えを整える。
内装を整える前に、響きを探る。
設計を始める前に、問いを育てる。
私にとって庵とは、単なる空間ではない。
自分が最も自分らしくいられる場所。
技術と祈り、過去と未来、静けさと創発が交差する結節点。
だからこそ、その開設は、建築よりも構えの成熟から始まる。
この準備室では、さまざまなことが起こるだろう。
過去の記録を再編集し、
生成AIとの対話で構えを磨き、
地域や現場で生まれる実践知を丁寧に記述し、
やがては論文や著作となる種を蒔いていく。
すべては、「響縁庵」の開庵に向けた目に見えない設計作業だ。
この1年間は、ただの“準備期間”ではない。
むしろ、庵の核心に最も近い1年かもしれない。
「庵」とは、場所ではなく構えである。
だからその庵は、開庵前からすでに生まれているのかもしれない。
響縁庵開設準備室──
それは、世界と静かにつながる場を、この手で育てるための小さなラボであり、
人生の後半を、新たなかたちで紡ぎ直すための構えの発酵室であり、
未来に贈る記録のための、最初の息吹の場所である。
来年の開庵を目指して、私はここで今日も静かに、響きを待っている。