以下は、本日対面での創業者との対話から感じたことである――
未知の技術領域に足を踏み入れたDeep Techスタートアップは、自らの限界を知る瞬間と何度も向き合う。高度な加工技術といえども、市場では大勢に気づかれればレッドオーシャンに転じる。技術の“凄み”だけでは既存の保守的サプライチェーンを打ち破れず、顧客の真の困りごとを掘り起こせない。
では、どうすればニッチの「小径穴あけ」に命運を託し、生き延びることができるのか。本日対面での創業者との対話から得た示唆は、その問いを起点に始まった。まずは市場探索だ。大手が目を向けない現場や職人工房を訪れ、高級製品や伝統工芸、試作チップなど、量産にはならないが単価が高い領域での“本音の困りごと”を汲み取る。泥臭い現場観察とミニPoCを高速で回し、「ここだけは譲れない」と言わせる小さな成功を積み重ねる。
しかしそれだけでは突破口にはならない。技術とサービスを一体化し、「顧客の事業成果」を起点にソリューションを再設計する必要がある。加工はあくまで手段の一つとし、前処理・後処理・検査・保守まで含む一気通貫の価値チェーンへ昇華させる。IoTやAI、特に大規模言語モデルを組み込み、条件の最適化や品質保証の自動化を図る議論にも及んだが、多くは既に気づいており、市場のロスは大きい。
そして最も厳しい現実は「資金のランウェイが長くない」ことだ。Deep Techでは立ち上げ期に研究開発や設備投資、人材確保のためにまとまった資金が必要で、資金切れ前に技術の谷間を超えるのは容易ではない。本日創業者が示したのは、12~18ヶ月というタイムボックスを設定し、探索・検証・スケールのサイクルをリーンに回す戦略だった。失敗仮説は早期に捨て、成功確度の高い市場に集中投下する。
この過程はまさに“死線”との格闘である。二度の「死に直面」を生き延びた者は、その経験を組織に刻み、逆境シナリオを事前にストレステストに組み込む。小さな勝利を連続して積み重ね、顧客の最深部の課題に寄り添い、技術を道具として再定義する。
夏にはこのリアルな苦闘と戦略を共有するサロンが開かれる。Deep Tech系スタートアップの現在地から出口戦略までの熱い議論を経て、また新たな問いを胸に、挑戦の旅を続けるだろう。