この世の中は暗黒である。ここではっきりとことわりを見分ける人は少ない。
網からの脱れた鳥のように、天に至る人は少ない。
世は深い闇に覆われている。
ことわりを見極める人は稀であり、その先の「天」に至る者はさらに少ない。
この比喩の「網」は、現代に生きる私たちには、資本主義という巨大な社会システムとして映る。
経済成長を至上の価値とするこの網は、評価や消費という見えない糸で人々を絡め取り、無自覚な従属を育ててきた。
しかし今、そのシステムは崩壊の段階に入っている。環境負荷、格差の固定、金融バブル──兆しは至る所にある。
網から抜け出すことは、確かに解放だ。
だが、それはゴールではなく、むしろ始まりに過ぎない。
外の世界には地図も保証もない。
他者の評価や経済的成功という羅針盤は失われ、頼れるのは、自らの内に据えた北極星──価値観と信念──だけとなる。
そのとき必要なのは、軽やかな羽ばたきではなく、揺るがぬ覚悟である。
覚悟なき自由は、すぐに別の網──依存、惰性、虚無──に絡め取られる。
覚悟ある自由だけが、網の外で飛び続けられる。
天に至るとは、必ずしも到達すべき一点ではない。
それは、自由を生き続ける覚悟を抱き、日々羽ばたき続ける生のあり方そのものである。