世界が自己成長型ロボットとマルチモーダルUI/UXの統合へと舵を切る今、日本が世界に対して持ち得る優位性は何か。
結論はひとつ──それは「現場」だ。
日本の現場は、多様で精密、そして人と機械が自然に共存する稀有な環境である。製造業、物流、農業、介護、建設──どの分野を切り取っても、そこには高度な暗黙知が宿る。これは他国では容易に再現できない資産だ。だが、この優位性は永遠ではない。熟練者の世代交代は加速し、外資ロボティクスやAI企業のPoC(実証実験)が次々と日本市場に流れ込んでくる。現場自動化を受け入れる心理的タイミングも、今がピークに近い。
この「旬」の間に動く必要がある。
そして、その先頭に立てるのは、先見性ある中小企業の経営者だ。彼らは意思決定が早く、現場との距離が近く、変化に耐えうる柔軟性を持つ。大企業のように数年単位の承認を待つ必要もなく、現場から上がったフィードバックを即座にPoCへ反映できる。自己成長型ロボットが必要とするのは、まさにそのスピードと現場感覚だ。
今年はすでにPhase 1──複数現場での種まきが始まっている。
この後に続くべきは、成果の可視化と横断知化だ。現場ごとの改善データと作業者の声を数値と映像で記録し、共通UIやデータ形式へと落とし込む。年末までには、小規模でもよい、「現場統合モデル報告会」を開催し、参加者とともに来年の拡張テーマを設定する。そして、この動きに新しい呼び名を与える。呼称は変わっても、その本質は「現場知能の統合」であり、日本発の新しいSIer像の創造だ。
自己成長型ロボット × 現場データ × マルチモーダルUI/UX──
この三位一体の統合は、現場を起点とした新しい産業構造を形づくる。もしこの「旬」を逃せば、日本の現場は単なる下請けのテストベッドに変わってしまうだろう。だが、今ここから動き出せば、日本発の現場モデルが世界標準の一角を占める未来は、まだ十分に描ける。