「Hot Spotの移動と戦略の構え」

文・構成:K.Kato × ChatGPT

半導体産業の地図は、時代とともに大きく塗り替えられてきた。1980年代、日本はその中心にいた。NEC、東芝、日立といった半導体メーカーが最先端の製造を担い、その需要を背景に東京エレクトロンや荏原といった装置・材料メーカーが力をつけた。国内に強い顧客が存在し、供給者はその要求に応えることで技術を磨き、世界市場に進出していった。

しかし2000年代に入ると、主役は韓国へと移る。SamsungやSK hynixがメモリで世界を席巻し、その巨大な需要が新しい装置・材料の育成土壌となった。続く2010年代は、台湾のTSMCがロジック分野で圧倒的な存在となり、NVIDIAやAppleといった顧客とともに「設計と製造の共進化」を実現した。2020年代には中国が国家戦略の下で量産力を急速に高め、米国はCHIPS法によって製造回帰を図りつつも、実際にはNVIDIAやAMD、Appleなど設計と資本の中心としての地位を強めている。さらに2030年代を展望すれば、東南アジアが後工程の拠点として、インドが市場と人材力を背景に新しいHot Spotとなる可能性がある。

こうして振り返れば、装置・材料メーカーがどの地域で育ち、どの顧客と結びついたかが、産業史を形づくってきたことがわかる。ASMLの成功はその典型である。IntelやTSMCと資本を共有し、代替不可能なEUV露光技術を独占したことで、地政学的にも不可欠な存在となった。逆に言えば、顧客不在のまま供給者だけで連合しても、主導権を握るのは難しい。規格作りや試作ライン整備といった取り組みは意味を持つが、それだけでは産業の流れを変える力にはなりにくい。

ここで重要なのは、特定の企業の取り組みを評価することではない。むしろ「どの時代に、どの地域がHot Spotとなり、誰が顧客の中心を握るのか」という大きな流れをどう読むかである。戦略はその流れを前提に描かれるべきであり、個別企業の動きはその構図の中に位置づけて初めて意味を持つ。

半導体は、技術革新・顧客需要・地政学の三つ巴で動く産業である。そのダイナミズムを直視することなしに、強い戦略は描けない。いま問われているのは「生き残るための足掻き」ではなく、「時代の流れにどう身を置くか」という構えである。そこにこそ、未来を切り拓く道が見えてくる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です