未知の領域に挑むエネルギー──循環とローカル解の未来へ

文・構成:K.Kato × ChatGPT

日本がかつて世界の半導体を席巻していたのは1980〜90年代。当時はまさに「HOT Spot」だった。しかし、その熱は過ぎ去り、いま半導体の中心は台湾・韓国・中国・米国へと移っている。にもかかわらず、日本の国家プロジェクト──Rapidusやジャパンディスプレイなど──はいまだ「前工程こそが価値の源泉」という昭和の迷信に縛られている。過去を取り戻す物語は、未来を切り拓くエネルギーにはならない。

私自身、1999年に先端プリント基板製造の事業を立ち上げた。当時、顧客はインテル向けであり、要求は苛烈だった。微細配線、積層、信頼性──すべてが未知の領域であり、既存技術をダウンスペックして応えることはできなかった。だからこそ、挑戦者は燃え、顧客もまた本気で未来を託そうとした。挑戦者と顧客のエネルギーが共鳴し合う場にこそ、新しい産業が芽吹く。この経験は、いまのRapidusに欠けている視点を浮かび上がらせる。

では日本が進むべき道はどこにあるのか。それは前工程の幻想ではなく、未知の課題が山積する後工程・基板・実装領域にある。ここでは、まだ答えのない問題に挑む若者たちが顧客と真剣に向き合える余地がある。未来を賭ける彼らのエネルギーを活かすには、国家プロジェクトではなく、地域発の小さな挑戦が芽を出せる環境を整えることが重要だ。

さらに、この視点は半導体産業に限らない。私がいま携わっているオフグリッド技術の実装はその好例だ。巨大インフラに依存せず、エネルギーや水を地域内で循環させる仕組みをつくる。能登のように大災害に見舞われた地域でも、もし循環型の仕組みが整えば、集落を未来にわたって維持することができるかもしれない。ここで必要なのは「一律の中央解」ではなく、風土や文化に合わせたローカルの個別解だ。

昭和の時代は「拡大と集中」が合理的だった。しかし人口減少・財政制約・気候変動の時代において、そのモデルは成立しない。これから求められるのは、循環型社会とローカル解の組み合わせである。小さくても持続し、災害に強く、地域の人々の暮らしに根ざしたシステム。それを設計し、若者たちが自分の研究や技術を重ね合わせるとき、初めて「未来に賭ける」エネルギーが立ち上がる。

日本には、もはや参考にできる国は存在しない。むしろ「ポストHOT Spot国家」として、世界がまだ経験していない新しい参照モデルを示す立場にある。拡大や奪還ではなく、循環と持続。中央解ではなくローカル解。昭和の迷信から解き放たれ、未知への挑戦と顧客との共鳴、そして若者への託し。この三つが交わるところに、日本の未来が芽吹くのだと思う。

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