雨の朝、内への巡礼としての音楽──K701が照らす静けさ

今朝は雨が降っていた。いつものように神社まで歩き、静かに手を合わせるという日課が叶わないだけで、心は少し不安定になる。外へ向けて開くはずだった感覚が行き場を失い、内側のどこかに澱のように滞留する。そんなとき、部屋に流れてきたのはKDFCのオペラだった。劇的で濃密な声の世界。しかし今日の自分には、その熱量がまだ遠く、心に触れずに空を漂っていくようだった。外界がざわめく日は、むしろ静謐を求めるのだろう。

そこでふと耳を傾けたのが、今年のショパンコンクールで優勝したエリック・ルーの演奏である。彼のショパンは、表面の華やかさではなく、音の一粒一粒に潜む呼吸を聴かせる音楽だ。技巧を誇張せず、むしろ沈黙の質感を大切にしている。その響きは雨の朝に驚くほど寄り添い、心の深部にしずかに降りてくる。

その音を、iPhoneから外付けDACとヘッドフォンアンプを通し、AKG K701で聴く。K701は、余分な色をつけない澄んだ音場を持ちながら、響きの空気までそっと手渡してくれる稀有な道具だ。音楽の“正しさ”をそのまま届けるこのヘッドフォンは、まさに今朝のように内なる響きを確かめたい時間にこそ真価を発揮する。雨で歩けないぶん、耳の奥で別の巡礼をしているような感覚さえある。

参拝ができない朝でも、祈りの軸は失われない。それは外の動きとは関係なく、静かに息づいている。エリック・ルーの透明なショパンは、その軸をそっと撫でながら、「今日は内へ向かう日だ」と告げているようだった。雨の一日にも、こんなふうに音楽が小さな灯りをともす瞬間がある。

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