先日、ある大学で行われた特別講演の記事を読んだ。
そこでは、リアルな体験の価値や、社会と関わることの大切さが、丁寧に語られていた。
内容そのものに違和感があるわけではない。
むしろ、誠実で、真っ当な言葉だと思う。
ただ同時に、ひとつの問いが浮かんだ。
今の若い世代は、果たしてそれを「教え」として必要としているのだろうか、と。
彼らはすでに、この時代の不確実さを知っている。
正解が用意されていないことも、努力が必ず報われるわけではないことも、
日々の生活の中で実感している。
だからこそ、私たちができることは、価値を語り直すことよりも、
どう未来を手渡すかを考えることではないだろうか。
正直に言えば、同じ速度で彼らと戦えないことには、残念さがある。
年齢を重ねるとは、そういう現実を引き受けることでもある。
それでも、共に未来を作ることはできる。
前に立って導くのではなく、場を整え、問いを残し、やがて一歩退くという形で。
若者たちは、守るべき対象ではない。
信じ、任せるに足る存在だ。
私たち同世代に求められているのは、語り続けることではなく、
未来を託す覚悟なのだと思う。

