──介護・看護の現場から技術者へのメッセージ
私たちが「ロボット」と呼ぶものは、決して未来的で大掛かりな装置ではない。
現場にいる者たちにとって、それは「困りごとを静かに手伝ってくれる存在」にすぎない。
たとえば、誰かの腰を支えるもう一本の腕。
夜中にそっと動いてくれる見守りのまなざし。
あるいは、疲れ切ったスタッフの「無言のため息」を察して、少しだけ作業を引き受けてくれる道具。
それは決して派手なものではない。
けれど、そうした小さな機能が、一日のなかで何度も心を軽くしてくれる。
その瞬間、**“静かな奇跡”**が起きているのだ。
介護・看護の現場には、言語化されていない知恵があふれている。
その人の顔つき、わずかな体の揺れ、今日の空気感。
それらを感じ取りながら、手を動かし、心を寄せ、支える。
そこに「テクノロジー」はどう関われるだろうか。
「作業効率を上げる」ことは大切だ。
だが本当に望まれているのは、“ただ機能する機械”ではなく、**“そばにいてくれる何か”**なのではないか。
私たちが必要としているのは、高価な万能マシンではない。
小さな課題に寄り添ってくれる、小さな工夫たち。
壊れにくく、分かりやすく、手頃で、信頼できる存在。
だからこそ、技術者との対話が必要だ。
“課題の共有”ではない。“感覚の共有”である。
「こんなとき、もう一人いたら助かるんです」
「この作業、無駄が多くて……でも私たち、あまり文句を言わないんです」
「もっと簡単でいいんですよ」
こうしたささやかな言葉の中に、次の技術が生まれるヒントが眠っている。
技術とは、人を驚かせるものではなく、人を幸せにするものであってほしい。
そう願う現場の声が、どこかの工房やラボで誰かの直感に触れ、“かたち”になる日を、私たちは待っている。
それは、きっと静かな奇跡を支える技術になるだろう。