空と頂のあいだに──挑戦を奏でる二つの曲

FM FUJIのスタジオ収録に際して、私は二つの曲をリクエストした。
葉加瀬太郎の《Another Sky》、そしてハウンドドッグの《アンビシャス》。
どちらも、私にとって「挑戦」という言葉と深く結びついた音楽である。

《Another Sky》には、特別な記憶がある。
2000年以前(起業する前)、私は日立製作所や米国シリコンバレーの半導体製造メーカに勤めており、年に数回、シリコンバレーを訪れていた。当時、アメリカ西海岸へ向かう手段は、UnitedやAmericanといった米系航空会社が主流で、JAL便もあったが、選択肢は限られていた。

そんな中、私が起業した頃(1999年ごろ)ANAが挑戦者として国際線に本格参入し、NH7便──成田-サンフランシスコ直行便──が就航した。2000年から2007年まで私は月に1回のペースでシリコンバレーを訪問していた。その時にいつも乗っていたのがNH7便であった。
この便は、単なる移動手段ではなく、私にとって「挑戦のキャビン」だった。
乗り込んだ瞬間に流れてくるのが、《Another Sky》。
異国に向かう不安と期待のあいだに漂う私の心を、そっと背中から押してくれるような旋律だった。
慣れない環境で奮闘するキャビンアテンダントたちの姿と、自らの挑戦の日々が、あの機内で重なって見えた。

そしてもう一つの曲、《アンビシャス》。
1988年、日本テレビがチョモランマ(エベレスト)山頂からの世界初のライブ中継を成功させた、その記憶と共にある曲だ。

当時のプロジェクトは、今では想像もできないような壮大なものだった。
登攀チームだけでなく、放送機材を運ぶクルーたちが、あの標高にパラボラアンテナを荷揚げしていた
酸素の薄い世界で、重い機材を背負い、地上に向けて映像信号を届ける──その一人ひとりが、まぎれもない挑戦者だった。

私は思う。
挑戦とは、その規模や結果ではない。
その場に参加した全員が「成功させたい」という熱量を共有し、未来を信じて推進する行為こそが、挑戦なのだと。
そしてそれは、言葉ではなく音によっても刻まれていく。

《Another Sky》と《アンビシャス》は、私の記憶のなかで、
常に「挑戦とは何か」を問いかけ続けてくれる。
そして今もなお、その問いに応えるように、自らの構えを正し続けている。

挑戦とは、時代や場所を超えて響く構えのことなのかもしれない。
そしてその構えが、音となり、記憶となり、また誰かの心を灯すのだ。

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