守るという起業──インフラのうえに価値を立ち上げる構え

光、水、電気、土、空気──
これらは誰のものでもなく、誰かの手によってつくられたわけでもない。
けれど、これらがなければ、私たちは生きることができない。
人間の営みは、こうした「見えない支え」のうえに築かれている。

私たちはいま、エネルギーを再編集しようとしている。
かつては中央から一方的に届けられていた電力を、小さな単位で生み出し、
蓄え、融通し、循環させていく。
その構えが地域単位で芽生えはじめている。

だが、そこで問われているのは、ただの技術革新ではない。
それはもっと根本的な問い──
**「この町で、どう生きるか」**ということだ。

エネルギーは、インフラにすぎない。
問題は、その上にどのような価値を立ち上げるかである。
つまり、電気や空気を「どう守るか」ではなく、
**それらを土台にして、何を“生み出すか”**が問われている。

そしてその問いに、もっとも鋭く反応しているのが、
実は中高生たちではないか──そう思わされる場面が、各地に生まれつつある。

猪苗代高校の「ヒシ蕎麦」は象徴的な例だ。
ヒシ粉、雪下キャベツ、ウチダザリガニ──
その土地にありながら注目されてこなかった素材を、
高校生たちは「おいしい」「届けたい」「誇りたい」という想いで繋ぎ直し、
全国に発信する価値へと昇華させた。

彼女は、単に商品をつくったのではない。
土地の記憶と資源を、未来へと受け渡す“語り”を編み直したのだ。
この営みはまぎれもなく、起業家の構えである。

起業とは、会社を起こすことではない。
目に見えないものに価値を見出し、そこに人を巻き込み、
未来へつなぐ仕組みを生み出すこと。
その意味で、中高生こそが、いま最も起業的な存在なのかもしれない。

エネルギーを守ること、空気をきれいに保つこと、水と共に生きること──
それらを「正しいこと」としてではなく、
「自分たちが生きたい未来の風景」として思い描き、動き出す。

そんな若き構えが、地方の小さな町から立ち上がりつつある。
その兆しは、これからの時代を照らす、かすかな光だ。

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