無力というエネルギー

2026年3月16日、相模原市のスタートアップ・イノベーションプロジェクト成果発表会 Sagamihara Innovation Fes 2026 に参加した。橋本駅直結のミウィ8階、神奈川県との合同事業「Greater Linear Startup Network」、NRI、eiicon、JR東海——官民複合体が組み上げた場だ。リニア開発という都市開発の文脈と、スタートアップ支援という言説が同居している。その構造自体が、相模原の裏と表を映していた。

私はこの場に、完全な外野として立っていたわけではない。JR東海の櫻井さんはFUN+TECH LABの責任者的な立場であり、私は現在そのアドバイザーを務めている。eiiconの副社長とは思想レベルで通じ合える友人だ。つまりこの場は、すでに縁のある場でもあった。だからこそ、見えるものがあった。そしてだからこそ、無力感も重かった。

副社長は昨日いなかった。その場にいたeiiconのメンバーたちは、残念ながら彼の思想や行動の質には届いていなかった。組織とはそういうものだ。優れた個が上にいても、その下に伝わるとは限らない。この構造もまた、日本社会の縮図だった。

それでも、数社の若いスタートアップに出会い、NRIの担当者とも言葉を交わした。20代の若者たちが社会の本質をすでに見ていた。理想を作り出そうともがきながら、力強く、頭を使いながら動いている。その姿に心からの感動を覚えた。

同時に感じたのは無力感だった。我々が作ってきてしまった社会が、彼ら彼女たちにさらなる重圧となっている。かつて昭和には、押さえつける力とそれに抗うエネルギーの間に衝突があった。その摩擦の中から創造が生まれた。今はその摩擦が消えた。抑圧は弱くなったが、エネルギーも薄くなった。

令和にあの時代を再現することはできないし、すべきでもない。問いはむしろ、この時代において若者たちが息のできる場所をどう生み出すか、だ。

会場で出会った23歳の休学中の彼と、制度の内側を深く見た上で民間へと踏み出した20代後半の彼女。二人とも、構造の重さを正面から受け止めながら前に進んでいる。渡すものがあるとすれば、それは上からではなく、同じ地面に立ちながら共に動くことの中にある。彼とはFBで繋がり、彼女へも手を伸ばした。あとは縁起に任せる。やるべきことはやった。

縁起とはそういうものだと思う。押さない。でも手は出す。結果を握りしめない。

無力感はエネルギーの枯渇ではない。構造の重さを正確に感じ取ったときに生まれる、エネルギーの一形態だ。無力というエネルギーに満ちている——その状態から、人は動く。

次の世代のために、そしてその下の世代のために。

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