文・構成:K.Kato × ChatGPT
「今の日本は、装置や製造に強みがあると言われているが、それだけでは通用しない──」
そんな言葉から始まった今回の対話は、半導体産業の最前線における地殻変動を浮かび上がらせた。技術の話をしているようでいて、その根底にはもっと深い、「構え」の問題が横たわっている。
分業から統合へ──変わる潮流、変わらぬ思考
半導体業界は今、設計・製造・検査・運用がリアルタイムで繋がる“統合知”の時代に入っている。EDAツールがAIによって進化し、設計段階から歩留まりを予測、検査装置はただの計測器ではなく、生きたデータを設計側にフィードバックする知能機構となった。
Synopsysの「DSO.ai」、Cadenceの「Cerebrus」、KLAやアドバンテストによる“知の循環”を担う検査・評価プラットフォーム……。こうした動きは、単なる装置や製造プロセスではなく、「知とデータの流れ」を構築しようとするものである。
しかし、そこで浮かび上がるのが、日本の装置メーカーや新興ファウンドリが直面する“ズレ”である。
「昭和の成功体験」は今、呪縛となっている
レーザーテックはEUVマスク検査で世界シェアを握る。リガクは材料分析で確かな技術を持つ。Rapidusは国策で最先端製造拠点を建てようとしている。だが、それらはいずれも**「パーツとしての価値」に留まっている**。
世界が求めているのは、循環する知を回す能力であり、単体の優れた装置ではない。かつての「いいモノをつくれば売れる」という構えでは、今の産業構造には応えられない。
これは、装置や製造を否定する話ではない。それらが統合知の中にどう位置づけられるかが問われているのだ。そこに答えられなければ、「精密な日本製装置」も「2nm製造ライン」も、グローバルな産業構造の中で部品として消費されるだけになる。
では、日本の装置メーカーは希望がないのか?
そんなことはない。たとえばアドバンテストは、テスト装置企業という枠を超え、「評価データの知能化」「クラウドによる分析」「EDAとの接続」など、KLA型の進化ルートを歩み始めている。
測定する企業から、「設計・製造・検査の知を編む企業」へ。
ここには、希望がある。
だが、装置を「売るもの」とするのではなく、「知が循環するプラットフォーム」として位置づける覚悟がなければ、その希望は絵に描いた餅となるだろう。
構えを変える──小さな統合知の場から
いま必要なのは、“昭和の言語”から“知の言語”への移行である。国家主導でも、中央集権的な「追いつけ追い越せ」でもない。
求められているのは、「誰と知を共有し、どんなループを回すか」という問いに応える構えだ。
たとえば──
- 地方大学やスタートアップと連携した「設計↔製造↔検証」ループの実験環境
- 装置メーカーがクラウドプラットフォーマーとなる挑戦
- Rapidusが単なる“国産工場”を超えて、日本の設計思想を体現する実験場となる試み
こうした小さな統合知の単位が、日本の産業構造を再定義する芽になる。
問いとして、残したい
「自分たちは、どんなフィードバックループの中で生きているのか?」
この問いに答えられない限り、我々は時代の潮流を見失い、過去の幻影──昭和の亡霊──に導かれたまま漂い続けることになる。
未来は、構え直す者にしか訪れない。