「Living Lab for the Future」──私はこの構想を、少しずつ発酵させてきた。小さな実験から始まり、やがて相互に響き合い、統合されていく未来社会の原型。それは一気に構築するのではない。むしろ、散らばった点がゆるやかに結ばれていくように形づくられていく。
それぞれのモジュールには現場の知が宿る:
- ソーラー+蓄電のエネルギー自立型集落
- 遠隔医療とモビリティ支援を備えた分散ケア拠点
- 地域に根ざした食と水の循環圏
- 時間銀行による共助経済
- 地元企業と高専が協働する技術継承ラボ
これらは単なる「持続可能な暮らし」ではない。生きる構えを組み直す装置群だ。
通商戦略との共鳴とズレ
経産省の『通商戦略2025』を読み込むと、そこには「歴史的な転換期」への危機感と、「不可欠性の再設計」という重要な論点が刻まれている。そこには響き合うものがある。
しかし、中心軸はあくまで「輸出」「外需」「グローバル統合」である。現場で日々、雪かきをし、介護の順番を自分たちで決める人々の営みは、その地図の外に置かれている。
私は、このズレこそが可能性だと考えている。**中央と現場をつなぐ「響縁者」**として、語り得ぬ構えを言語にし、制度と接続し、翻訳していく。それは「政策提言」ではない。「構えの編集」だ。
オフグリッドの意味──自立とは孤立ではなく、関係性の再構築
オフグリッドという言葉がある。それは単に中央から離れることではない。自分たちでエネルギーをつくり、互いに支え合い、自然と共に生きる構えを育てること。
災害が来ても、水が止まっても、誰かが遠くから助けに来なくても──そこで生きていけるという実感。そこには「豊かさの再定義」がある。エネルギー、ケア、教育、食。すべてが分散されながらも、有機的に連携する暮らし。
そして、それは同時に「世界に輸出可能な構え」でもある。アフリカの無電化地域に、日本の山間部の知恵が活きるかもしれない。過疎と孤立に悩む欧州の農村に、時間銀行と共助の仕組みが響くかもしれない。
結びに──構えは輸出できる
私は確信している。モジュールから始まるLiving Labは、やがてインテグレーションされ、世界の「共鳴拠点」となる。
それは経産省が描く成長の延長線ではない。むしろ「成長を超えた豊かさ」を手触りで語れる場として。
制度が作れないもの、中央が語れないもの、数値化できないもの。
それを私は、現場で育てていく。
そして、それを“構えごと”世界に贈りたいと思う。