文・構成:K.Kato × ChatGPT
終わらない導入、終わっていく期待
テレビ東京『WBS』で紹介された、大阪の中小企業・樋口電子によるAI導入の成功事例。
プリント基板のはんだ付け検査におけるAdcotechのAI検査システムは、まさに「AIが現場に浸透した象徴」のように語られていた。
しかしその裏側で、多くの中小企業が導入を試みながらも途中で手を引いたという現実も明かされた。
表に出るのは“成功例”ばかりだが、水面下には“うまくいかなかった”企業が無数にある──これが現場の実態である。
「AI導入」は、そもそも間違った問いだったのか?
多くのAIベンダーは、画像認識や自然言語処理といった「技術の塊」を「ソリューション」として売り込む。
けれど、現場にとっての問いはもっと単純だ。
「この工程で、今よりラクに、今より確かに、できるようになるか?」
ここに“AI”という言葉はない。
それが日々の現場の構えである。
現場がAIを導入する時代──真のEnd-to-Endとは
「AIを使ってみませんか?」
「一緒にPoCをやりませんか?」
その問い自体が、もはやズレている。
現場が自らAIを立ち上げる──これこそが本来の“End-to-End”であり、再生の兆しである。
現場作業者が、自らの判断で、
- 手軽なAIツールを使って
- 工程ごとにモデルを立ち上げ
- 結果がダメなら即座にやめる
こうした**“小さな試みの連続”が自律的に生まれていく**ことこそが、AIのあるべき姿だ。
もはや「導入支援」や「要件定義」などという言葉は、現場の速度に合わない。
ロボットSIerの終焉に似た構造的崩壊
この流れは、ロボットSIer(システムインテグレータ)業界の現在とも深く重なる。
- 特注設計を前提としたロボットSIerは、中小企業ごとの個別ニーズに対応するため、案件ごとに高コスト化していった
- 結果として、ビジネスとしての収益性が成立しなくなり、スケールできない構造に陥った
AI業界も今、同じ道を歩んでいる。
「AIで何でも解決できます」ではなく、“現場が手にできるUX”の設計こそが、残される最後の価値となる。
技術から構えへ──再生の道
では、AIソリューション企業は淘汰されるしかないのか?
いや、そうではない。
再定義される必要があるだけだ。
彼らに残された選択肢は次の3つしかない:
- UXの徹底的な最適化
現場が「自分でやれる」と思えるツールを設計する企業になる - “AI工務店”的立場に回る
技術者から“使える場の設計者”へ──導入後の変化に伴走する構え - 現場が集まるプラットフォーム提供者になる
中小企業同士がノウハウを共有し合える場をつくる
終焉のなかに、種がある
もはや「AI導入」という言葉は、時代遅れの問いかもしれない。
導入するのではない、自らの手で立ち上げるのだ。
その“手触り”を信じる構えが、いま、全国の町工場に静かに芽生えはじめている。
終焉は始まりである。
そこには、新しい技術の使い方ではなく、技術とともに歩む構えが育ちつつある。