文・構成:K.Kato x ChatGPT
構想を語ることは、誰にでもできる。
半導体が歩んできた歴史をなぞれば、次にプリント基板産業に訪れる課題や解決策はある程度予測できるからだ。
しかし、それだけでは何も変わらない。問われるのは、構想を実現へと移す力である。
歴史の延長と限界
これまでの基板産業は、シートバイシート方式やリジッド基板の製造体系によって支えられてきた。
だが、AIサーバーや高速通信といった新しい需要が生まれ、配線幅・線間は10マイクロメートル以下という未踏の領域に入りつつある。
そこに立ちはだかるのは「異物」と「歩留まり」という、30年前に半導体産業が直面した壁だ。
そして、もしこの壁を突破するために工場全体を半導体並みにクリーン化すれば、莫大な投資が必要となり、大資本しか生き残れない世界に変わってしまう。
連続ラインという答え
この状況に対する一つの解が、連続ライン(Roll-to-Roll)方式である。
プリント基板の中でもフレキシブル基板はもともとフィルム基材を用いる。ならば、連続処理の発想は自然な帰結だ。
シートを一枚ずつ搬送するのではなく、フィルムをロールで連続搬送すれば、異物の侵入リスクを減らせる。
さらにラインそのものを筐体で覆い、局所的にクリーン化(Mini Environment)すれば、工場全体を改造せずとも高い清浄度を確保できる。
巨額投資を避けながら、微細化に耐える製造環境を実現できるのである。
少量多品種と稼働率
未来の市場は二つの顔を持つ。
一つは、NVIDIAをはじめとするAIサーバーや高速スイッチに代表される大ロット・高付加価値の需要。
もう一つは、医療やウェアラブル機器に求められる小ロット・多品種の需要である。
この二つを同じ連続ラインで処理できることが、持続可能性を生む。
大ロットで瞬間的にラインを埋め、小ロットで安定的に稼働を維持する。
工場にとっての生命線は稼働率であり、**「両者に対応できる柔軟な製造ライン」**こそが未来を切り開く。
日本の中小が持つ武器
イビデンや新光電気工業といった大手、メクトロンや住友電工、フジクラ、日東電工といったFPCメーカーは確かに存在感を示している。
だが、彼らだけでは投資競争の荒波に呑まれる危険もある。
そこで必要となるのが、日本の中小企業が持つ「歩留を救う技術」だ。
- 局所的なクリーン化
- バブル洗浄や薬液管理による異物除去
- 高精度搬送や張力制御
- マスクレス露光やインライン検査
これらを組み合わせれば、巨額投資ではなく知恵で未来を拓く基板産業が実現できる。
実現こそが出口
構想を描くことは簡単だ。誰もが同じ歴史を参照すれば、似たような答えにたどり着く。
しかし、本当に意味があるのは、その構想を形にすることだ。
試作を行い、ラインを設計し、実際に稼働させる。
その一歩を踏み出せる者だけが、未来の基板産業の布陣に名を刻むだろう。
結び
「基板産業の次の一歩」は、構想ではなく実現の中にある。
連続ラインとプリント基板の融合が、資本競争を超えた新しい日本の道を切り拓く。
その出口はただ一つ──実現である。