2026年4月7日、新居の上棟だった。
私たちが現場に着いたのは朝の9時半過ぎ。作業は7時には始まっていたという。大型のクレーン車と木材を積んだトラックが敷地に収まり、気づけば1階はすでに組み上がっていた。2階の床組みが進む音の中で、私たちは現場監督の菊田さんに迎えられた。
菊田さんは今、13の現場を同時に見ている。それでも丁寧に、今日の作業の段取りと、それぞれの職人の役割を説明してくれた。上棟専門のチームがいること、そして彼らはこの日限りであること。そして、今日から先ずっとこの家に関わり続けるのが棟梁だということを。
10時の休憩に合わせて、内部に入らせてもらった。基礎の上に並ぶ檜の床材と、立ち上がり始めた杉の柱。「硬さの違いを感じてほしい」と菊田さんに言われ、両手で触れてみた。檜は冷たく密で、杉は少し柔らかく、どこか温かみがあった。設計図の中の材料が、初めて手の感覚になった瞬間だった。
その後、棟梁と話した。気づけば1時間を超えていた。私はこの家をどんなふうに建ててほしいかというより、この人がどんな人間なのかを知りたかった。そして、託す、という言葉を直接伝えたかった。設計士でも工務店でもなく、毎日ここに来て鑿を持つ人に。話しながら、少し熱くなった。それでよかったと思っている。
昼食を橋本でとり、午後はトレーニングをして、午後2時半ごろもう一度現場へ寄った。上棟チームの姿はなく、棟梁と菊田さんだけが残っていた。短く挨拶をして、その場を後にした。
家が立ち上がる日は、一日だけしかない。その日に、棟梁という人と言葉を交わすことができた。それが、この日のいちばん大きなことだったように思う。

